発現(expression)という用語の意味と使い方
「発現」の意味 用語の一口メモです。筆者は、このブログではなるべく専門用語を使わないように努めています。ですが、「発現」という用語はときどき使っており、前回の mRNAワクチンの記事 でも中途半端に使ってしまいました。よい機会だと思うのでここで意味を説明し、今後はあまり気にせずに使いたいと思います。 * * * 一般的な言葉としても発現は使われていると思いますが、多分、“出現”と似たような意味ではないでしょうか (辞書を引くと“実際に現れ出ること”などと書いてあります) 。 専門用語としての「 発現 」は、「 転写 」、「 翻訳 」、という限定的な意味に加えて、合成されたタンパク質が細胞内のどこかに存在する、あるいは出現するというような、 一般的意味に近い意味 も持ちます。 くだけて言うと、(タンパク質の)出現・存在に、それに至るまでの過程をプラスした動的なイメージの言葉、と捉えておけばよいと思います。 ちなみに、「転写(transcription)」、「翻訳(translation)」の意味は、前回の mRNAワクチンの記事 で述べた通りです。 「発現」の使い方 たとえば、よく使われる 遺伝子発現(gene expression) タンパク発現(protein expression) という二つの言葉について考えてみましょう。 狭義には 、前者は「転写」を、後者は「翻訳」を意味します。 (前者の例では、たとえば“遺伝子発現のプロファイリング”というと、ある細胞や組織等に存在するmRNAを網羅的に測定するような方法論です) しかし、 広義には 、前者は「転写」だけでなく「翻訳」以降の過程も、後者は場合によっては、遺伝子導入から「転写」、「翻訳」、さらにはその後のタンパクの出現、存在までの全ての過程を含みそうです。とすると、上の二つはほぼ同じことを言い表していて、力点の置き方が少し違うだけということになるのかもしれません。 このように「発現」は意味に幅のある用語ですが、概念としてはmRNAかタンパクかが“現れ出てくること”であり、上記を理解しておけば大体意味が取れるのではないでしょうか。 mRNAワクチンの記事で、たとえば「MHC分子が細胞膜に発現している」ならば、“MHC分子が細胞膜に存在・出現している”、と受け取れますよね。 * * * 「発現」を使えば、mR